PROGRESSIVE FOrM / PFCD64
2016.12.2 release / ¥2,000 (tax ex)
Guest :
クラシック/現代音楽等のアカデミックなシーンにおいて日本音楽コンクール第1位受賞(作曲部門)やNHK Eテレ『スコラ 坂本龍一 音楽の学校』への出演等で活躍する一方、電子音楽/サウンドアートのシーンにおいてラップトップによるライブパフォーマンスを断続的に行うなど、ジャンルに捉われない極めて幅広い活動を行っている音楽家の網守将平。これまで音楽シーンと美術シーンの狭間で五線譜とコンピューターを瞬く間に持ち替えてきた彼の単独デビュー作は、自らのピアノやボーカルをエレクトロニックサウンドと共にふんだんに取り入れた、まさかの全編ポップミュージックによるフルアルバム。予測不可能な楽曲構造と複雑なアレンジメントが展開されつつも、一度聴いたら頭から離れなくなるような中毒性の高いメロディーを隙あらば擦り込ませるなど、ジャンル不問かつ総合的に培われた作曲スキル・ポップセンスが容赦なく発揮されており、アルバム全体が一本の叙事詩的映画のように絶妙にまとめ上げられている。そこには、YMO~渋谷系~音響派と脈々と受け継がれてきた日本の音楽とテクノロジーの歴史や文脈を一旦脱構築し、ポジティブに俯瞰する行為をリスナーにもたらし得る、多様な聴取/思考の可能性が備わっている。
ゲストヴォーカリストとして、シンガーソングライターとして既に全国的に高い評価を得ている柴田聡子(M3)、作曲家としても活動しnobleからのリリースなどで知られるBabi(M8)が参加。作詞とギターで、活発なソロ活動と共にceroなどのサポートミュージシャンも務めている古川麦(M10)が参加。マスタリングは、サウンドアーティストでありながらエンジニアとしてもテニスコーツ作品のマスタリングなど幅広く活動を展開している大城真が担当。コンピュータグラフィックス・実写合成を用いたアートワークは若手美術作家である永田康祐が担当している。
畠中実(キュレーター、音楽/美術批評)
エレクトロニカ以後のポップスについて考える。ラップトップ・ミュージックの隆盛以降、アレンジのヴァリエーションのひとつとして、それはすでに一般化した手法にもなっている。ある種の時代に特徴的な音楽スタイルは、より通俗的な音楽の意匠として再利用されていくものだ。ポップスとは同時代をもっとも鮮明に反映した、感覚的に、あるいは技術的にも先鋭的な音楽を作り出すものであると考えるならば、ポップスとはつねに実験的なものであるはずだと言うことも可能だろう。音楽スタイル、レコーディング技術などの実験が、やがて新しい音楽スタイルの潮流を作り上げていく。そこでは、実験的であることとポップスであることが相反するものなのではなく、従来的なアプローチによらない実験によって、リスナーの耳をアップデートすることになる。ある音楽がジャンルとして確立され、その当初持っていた先鋭的な要素が、より耳あたりのよい音楽に変化していっても、一方で、音楽のアップデートは今後も果敢に試みられるだろう。
網守将平は、アカデミックな現代音楽を出自とする音楽家であるが、現代音楽、コンピュータ音楽、サウンド・アート、美術家とのコラボレーションなどの多角的な活動を行なってきた。それがなぜなのか、というところにこの作品が制作された動機があるのかもしれない。正統な現代音楽を受け継ぎつつ、エクストリームな電子音響によるライヴ・パフォーマンスを行なうなど、どこか分裂したところも感じられる活動の振れ幅が、この音楽家の「アイデンティティのなさ」を表している。その出自によって、どうしようもなく音楽家であることと、その外部との影響関係において、外縁へと拡張した自身の音楽家的資質のせめぎあい、あらゆる音楽が自身の外部に属しているという意識、によって生み出された作品がここにおさめられている。どこかに帰属している、ということの自由さではなく、どこにも帰属できないがゆえの自由さ、と言うよりはふっきれた、むしろ諦念すら感じさせるような音楽家の態度が作品から感じられるかどうか。とは言いながら、ここには日本の現代の音楽家が、いかに実験とポップスを再構築するか、といった問題意識を聴き取ることができる、音楽家のほとばしる創作意欲を、おしみなく詰め込んだ作品だ。
写真:冨田了平
写真:冨田了平
音楽家。作曲家。東京芸術大学音楽学部作曲科卒業、同大学院音楽研究科修士課程修了。2013年日本音楽コンクール作曲部門1位(室内楽)等受賞歴多数。学生時代より、クラシックや現代音楽の作曲家/アレンジャーとして活動を開始し、室内楽からオーケストラまで多くの作品を発表。作品はパリ、ロンドン、モントリオール等海外でも広く演奏され、NHKFMの現代音楽関連番組でも取り上げられている。また東京芸術大学大学院修了オーケストラ作品は大学買上となり、東京芸術大学大学美術館にスコアが永久保存されている。2010年以降は電子音楽やサウンドアートの領域においても活動を開始し、美術館やギャラリーでのライブパフォーマンスや他アーティスト楽曲のリミックス、映像作品への楽曲提供、マルチチャンネルによるサウンドインスタレーション作品などを発表。近年はポップミュージックを含めさらに横断的且つ総合的な活動を展開し、様々な表現形態での作品発表・ライブパフォーマンスを行っている。またコラボレーションワークも積極的に行っており、原摩利彦、大和田俊、梅沢英樹など多くのアーティストとの作品制作を断続的に行っている。2017年、梅沢英樹との共作アルバムをHome Normal(英)よりリリース予定。
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クラシック/現代音楽等のアカデミックなシーンにおける国内外での作品発表、NHK Eテレ『ムジカ・ピッコリーノ』の音楽制作/サウンドデザイン、また電子音楽/サウンドアートのシーンにおいて展示やライブパフォーマンス等を断続的に行うなど、ジャンルに捉われない極めて幅広い活動を行っている音楽家の網守将平、その最新アルバム『SONASILE』のリリース・イベントがCAYにて開催決定。
網守将平は『SONASILE』にも参加した古川麦(Gt.)とBabi(Guest Vocal)に厚海義朗(Bass)、角銅真実(Perc. )、松本一哉(Dr.)を加えた【網守将平とバクテリアコレクティヴ】というスペシャル編成のバンドで、ゲスト・ボーカルにbabiが参加し出演。
またゲスト・ライブにて、1979年にパンクバンドAunt Sallyで活動をスタート後にソロとして国内外の数々のミュージシャンとコラボレーションを行い現在は2013年からはじめた電子音楽のソロユニットとパンクバンドMOSTを中心に活動する【Phew】、さやと植野隆司により1996年の結成後高い評価と幅広い人気を誇り2015年~2016年にかけサウンドエンジニア宇都宮泰と組んだシリーズ作品「Music Exists 1~4」を一挙リリース、本年は札幌国際芸術祭への参加を予定しているご存知【Tenniscoats】、多くの作品をリリースしつつ2017年3月に秀逸な2ndアルバム『Wish』をPROGRESSIVE FOrMからリリースしたロンドン育ち/メルボルン在住のミュージシャン兼プロデューサーRob Mastertonによるソロ・プロジェクト【Super Magic Hats】は本公演の為に来日、そしてPROGRESSIVE FOrMから2枚のアルバムのリリースやIna-GRM(フランス)での作品上演などをしつつリュック・フェラーリ国際コンクールのプレスク・リヤン賞2015を受賞する梅沢英樹はキュレーションユニットEBM(T)の活動などで知られる松本望睦とのコラボレーション・ライブを『SONASILE』のアートワークを手掛けた永田康祐をVJに迎えパフォーマンス、以上4組が出演。
またDJとして、ceroのフロントマン髙城晶平、『SONASILE』のライナーノートを担当したICC主任学芸員の畠中実が参加する。
注目のアーティストらが多数参加する《SONASILE RELEASE EVENT》、是非お楽しみ下さい。
音楽家。作曲家。学生時代より、クラシックや現代音楽の作曲家 / アレンジャーと して活動を開始し、室内楽からオーケストラまで多くの作品を発表。作品はパリ、ロンドン、モントリオー ル等海外でも広く演奏され、NHKFMの現代音楽関連番組でも取り上げられている。また東京芸術大学大学院修了オーケストラ作品は大学買上となり、東京芸術大学大学美術館にスコアが永久保存されてい る。2010 年以降は電子音楽やサウンドアートの領域においても活動を開始し、美術館やギャラリーでの ライブパフォーマンスや他アーティスト楽曲のリミックス、テレビ番組におけるサウンドデザイン、映像作品への楽曲提供、マルチチャンネルによるサウンドインスタレーション作品などを発表。近年はポップミュー ジックを含めさらに横断的且つ総合的な活動を展開し、様々な表現形態での作品発表・ライブパフォーマンスを行っている。またコラボレーションワークも積極的に行っており、原摩利彦、大和田俊、梅沢英樹 など多くの アーティストとの作品制作を断続的に行っている。2016年12月には初のソロアルバム『SONASILE』をPROGRESSIVE FOrMよりリリースした。
カルフォルニア生まれ。音楽家。
幼少期より様々な土地を巡り、多様な文化に触れる。その経験から、ジャズ・クラシック・ポップス・南米音楽や民族音楽などの要素を渡り歩く独特なスタイルの音楽を紡ぎ出し、老若男女国籍問わず絶賛を浴びる。ソロ以外にも表現(Hyogen)、Doppelzimmer、cero、あだち麗三郎クワルテッットなど、多数のグループに参加。
2014年10月初のソロアルバム”far/close”発売。2016年9月に7inch"SevenColors"をカクバリズムよりリリース。
2003年名古屋にてGUIROに加入。2009年より拠点を東京に移し、OishiiOishii、藤井洋平&The VERY Sensitive Citizens of TOKYO、cero、G.RINA&Midnightsun等で活動中。
長崎県生まれ、音楽家 打楽器奏者。
マリンバをはじめとする色々な打楽器、自身の声、身の回りの気になるあらゆるものを用いて、音楽といたずらを紡いでいる。
その形はインスタレーション、アートプロジェクトでの作品制作にも及び、演奏だけにとどまらない作家としての自由な表現活動を展開している。
ソロでの活動の他、2016年夏よりバンドceroにてコーラスとパーカッションでのサポートメンバーとしての活動や、さまざまなライブサポート(Doppelzimmer,野田薫,古川麦etc…)テレビ番組収録などの演奏活動、番組内の音楽やCM・映画音楽の楽曲演奏をはじめとするスタジオワーク、作曲家の新作初演・現代音楽をはじめとするコンサートでの演奏、ダンス作品や映像作品への楽曲提供も行なっている。
7月7日、自身初となるソロアルバム"時間の上に夢が飛んでいる"を発表。
東京を拠点に活動している石川県金沢出身の音楽家・打楽器奏者。
波紋音・音のかけら・三昧琴などの音の鳴る造形物を使用。音階や旋律ではなく音の響きそのものに着目し、自然の中での演奏・録音からドキュメンタルな作品作りを行うなど、独自の音楽活動を展開。自身の演奏と環境音とを繋げていき、空間全体を聴く事で表現する即興音楽は、打楽器奏者の枠を超えより自由に空間の成り立ちを提示できる数少ないアーティストとして様々な分野から高い評価を受けている。2ndアルバム”『落ちる散る満ちる』“をSPEKKから2017年6月25日にリリース予定。
室内楽調のコンテンポラリーな音づくりを主に目指して活動。日記の様に色・食べ物・出来事・音楽・植物・昆虫・感情などの観察をしつつ、いろいろな曲に変換する日々。また、コレクションの音楽・CM音楽・映像作品や展示の為の音楽などを制作している。
1979年にパンクバンドAunt Sallyで活動をスタート。バンド解散後はソロとして、国内外の数々のミュージシャンとコラボレーションを行なう。現在は、2013年からはじめた電子音楽のソロユニットとパンクバンドMOSTを中心に活動している。2015年12月にFelicityよりソロ・アルバム「ニューワールド」をリリース。2017年3月にはアメリカのMESH-KEYレーベルからアナログ盤「Light Sleep」がリリースされた。
1996年結成、さやと植野隆司のバンド。ライヴでの基本演奏楽器は、うたと鍵盤、アコースティックギターのシンプルな編成である。しばしば国内外のミュージシャン、アーティストとアルバムの共同制作やライヴ共演を行うが、共演相手のサウンドスタイルを取り入れ、楽曲の美しさや面白さが際立つ作品を数多く創り出している。
2015年~2016年にかけ、サウンドエンジニア宇都宮泰と組んだシリーズ作品「Music Exists 1~4」を一挙リリースした。本年は、ドイツ録音盤のリリース、札幌国際芸術祭への参加を予定している。
ロンドン育ち/メルボルン在住のミュージシャン兼プロデューサーRob Mastertonによるソロ・プロジェクト"Super Magic Hats"。
ポップなメロディーを主軸にノイズと実験性を織り交ぜたキッチュなサウンドを展開、一般的な楽器以外の物をも含めたサンプリングをベースに心地よい空間系エフェクトを施し複雑かつ綿密に構築し、聴き手の情感に寄り添う温かい楽曲をプロデュースしている。
これまでに、米シアトルのHush Hushレーベルよりアルバム『Separation』を2016年5月にリリース、4枚のEP『Daydram』(Hush Hush 2015)『Slowly』(Tanukineiri 2015)『Kumori』(Hush Hush 2014)『Super Magic Hats』(Self 2013)、また4枚のシングルをリリースする。
Super Magic Hatsの楽曲「Happy Jazz」と「Hangin'」がオーストラリアとメルボルンの大手ラジオ曲<Triple J>と<Triple R>で大きく取り上げられたことにより2011年にまずはメルボルンのシーンで注目されることになる。それが発端となり楽曲「Happy Jazz」はBleep.comの未契約トラックを集めた部門で4,000曲の中から最優秀を獲得、英BBCの<Radio 6>でもオンエアーされさらに高い評価を得ることとなり、エレクトロニックのニューカマーを収録したBleepのコンピレーションにも収録される。
同年9月からライブ・パフォーマンスも開始、その後シドニー出身のインディー/ダンス・バンドRÜFÜS(RÜFÜS DU SOL)、Warner MusicオーストラリアのアーティストThe Kite String Tangle、米Ghostly InternationalのShigetoらのツアーをサポート・アクトとしてオーストラリアの有名な会場で数多い公演を行う。
そして2017年3月、制作に15ヶ月以上をかけ、より音楽の深さと叙情性を纏わせた秀逸な2ndアルバム『Wish』をリリースする。
1986年生まれ、東京都在住。PROGRESSIVE FOrMから2枚のアルバムのリリースやIna-GRM(フランス)での作品上演、インスタレーションの制作/発表を行う。主な受賞暦にリュック・フェラーリ国際コンクール-プレスク・リヤン賞2015、これまでの展示に『0℃』(blanClass, 2016)など。東京藝術大学大学院美術研究科在籍。
1990年生まれ。デザインキュレーター。バーチャル聴覚室EBM(T)主宰。
1990年愛知県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了。メディアとイメージの関係を取り扱いながら、写真やコンピュータグラフィクスなどを用いたインスタレーションや映像作品を発表している。主な展示に、個展『Therapist』(2016, TWS本郷, 東京) 、『Malformed Objects』(2017, 山本現代, 東京) などがある。
様々な感情、情景を広く『エキゾチカ』と捉え、ポップミュージックへと昇華させるバンド「cero」のボーカル/ギター/フルート。ceroではFUJI ROCK FESTIVALなど数多くの大型フェスに出演、海外アーティストの来日サポートやクラブシーンでのライブなどジャンルレスに活動の場を広げている。また、ソロ活動では弾き語り及びDJも行っている。
1968年生まれ。NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] 主任学芸員。多摩美術大学美術学部芸術学科卒業。1996年の開館準備よりICCに携わる。主な企画には「サウンド・アート──音というメディア」(2000年)、「サウンディング・スペース」(2003年)、「サイレント・ダイアローグ」(2007年)、「可能世界空間論」(2010年)、「みえないちから」(2010年)、「[インターネット アート これから]―ポスト・インターネットのリアリティ」(2012年)、「アート+コム/ライゾマティクスリサーチ 光と動きのポエティクス/ストラクチャー」(2017年)など。ダムタイプ(2002年)、明和電機(2004年)、ローリー・アンダーソン(2005年)、八谷和彦(2006年)、ライゾマティクス(2013年)、磯崎新(2013年)、大友良英(2014年)、ジョン・ウッド&ポール・ハリソン(2015年)といった作家の個展企画も行なっている。美術および音楽批評。